Intel、IoT事業再編か

Intelが、IoT関連製品の内、Galileo、Edison、Jouleの製造を中止するようです。

GalileoはIntel版のArduinoで、スマホの波に完全に乗り遅れたIntelが、IoTのビッグウェーブには乗り遅れまじと鳴り物入りで参入したのが2013年。その翌年にはウェアラブルの決定打としてEdisonモジュールを投入し、Jouleに至っては、2016年8月に発表したばかりです。

有名な科学者にちなんで名付けられたこれらの製品は、CEOのBrian Krzanich自ら、キーノートスピーチで大々的に発表する気合の入れようでしたが、食後のオレンジシャーベットのようにあっさり撤退してしまいました。

特にJouleは、Atomプロセッサー、4GBメモリー16GBフラッシュ、4Kビデオ対応、WiFi内蔵、顔トラッキング、自然言語プロセッシング等も可能なハイエンド組み込みソリューションとして、てんこ盛りな内容でしたが、x86系では、ドローン向けVisonセンサーのRealSense用の開発ボードとしても使われているフル機能SBC(シングルボードコンピューター)のUP Boardが人気で、小さくパワフルな上、2020年まで入手性が保証されているなど安心して採用しやすく、Jouleとの住み分けが難しかったのかもしれません。

Arduinoに関しては、今回製造中止の憂き目を逃れたCurie (キューリー夫人)を搭載したGenuino101(米国での商品名はArduino101)が残るので、Galileoがなくても特に問題はないです。

しかし、さすがに1年足らずで撤退されてしまうと、プロダクトライフサイクルが長い組み込み系では、リスクが高すぎて採用したくない、と言う人が増えるのではないでしょうか。

ただでさえ組み込み系はARMの独占状態で、Intel念願のx86チップ普及がかかっていた製品群だけに、あまりに諦めが早く、簡単にユーザーを見捨てる会社とのイメージができてしまうのは仕方ないですし、今後組み込み系のデザインにIntel製品を採用する際には、躊躇してしまうどころか、使用禁止令が出る会社も少なくないと思います。ただ、IntelはJouleの発表と同時に、ARMからライセンスを受けてARM系チップの製造を始める、と、ほとんど白旗を上げるに近い内容の発表もしており、もともと敗戦処理が確定路線だったのかもしれません。

ドローン関連では、複数のRTKソリューションや、Pixhawk系のフライトコントローラーが、Edisonを前提にしたデザインになっているのですが、基盤設計やり直しになるだけではなく、モジュールサイズやソフトウェア環境を考えると、乗り換え先は簡単にはみつからない状態だと思います。関係者の皆様におかれましては、誠に御愁傷様でございます。

インテル以外のマイクロコントローラーベースの開発ボードや、メーカーズ向けSBCマーケット全体では、ArduinoRasbperry Piがそれぞれ寡占状態にあり、ベアモジュールの入手性も良く、なかなか他に魅力的な選択肢がないのが現状です。

クラウドファンディングのSBCは雨後の筍のように出てきていますが、周辺機器、コミュニティ、ソフトウェア資産の問題等に加え、安定供給が望めないとなると、とても製品に採用できるものではありません。

その中で、よく頑張っているのがTexas Instrumentsのオープンソース開発ボードBeagle Boardシリーズです。Raspberry Piは基本的に安価なLinux PCであるのに対し、Beagle Boardシリーズは初めから組み込み用SBCとして設計されており、ヘッドレスでも非常に使いやすく、痒いところに手が届く設計になっています。また、常に製品をリフレッシュしながらも後方互換性が保たれ、息の長い製品としてゆっくり焦らず育ててゆこうという姿勢にも好感がもてます。ごく最近も、加速度センサーやジャイロを搭載し、そのままフライトコントローラーやロボットコントローラーとして使えるBeagleBone Blueがリリースされたばかりです。

IoT市場は爆発的な成長が見込まれており、Intel以外にも、Qualcommを始めとするチップメーカー系各社がせめぎ合っていますので、今後も目が離せません。